婦人科のQ&A
婦人科のQ&A
A.毎月の月経に伴って現れるいろいろな身体の不調(下腹部痛・腰痛・頭痛・便秘や下痢・憂うつやイライラなど)を月経困難症と呼びます。月経困難症の原因は、機能的な原因(プロスタグランジンという物質による子宮の過収縮によるもの)と器質的な原因(子宮筋腫・子宮腺筋症・子宮内膜症・子宮奇形などによるもの)の2つに大別されます。
機能的な原因の場合には、鎮痛剤の第一選択は非ステロイド系の消炎鎮痛薬(NSAIDs)で、これによってプロスタグランジンの産生を抑制することができます。ただし、この薬だけでは鎮痛が不十分な場合もあり、その場合は「LEP製剤」と呼ばれる治療用の低用量ピルを定期的に内服することによって子宮内膜の肥厚を抑制し、月経痛をより緩和することが期待できます(この薬は月経中だけではなく、月経周期に合わせて3週間程度定期的に内服する必要があります)。また、当帰芍薬散などの漢方薬も月経痛の緩和に有効です。 器質的な原因の場合も薬物による治療は同様ですが、場合によっては手術が必要になる場合もあります(子宮内膜症にともなう卵巣嚢腫の切除など)。
A.一般的には月経周期は通常25日から38日の間が正常の周期と言われていますが、もともと月経周期が不順な場合や、これまで順調に来ていた月経が不順になってしまう場合などいろいろなケースがあると思います。月経周期に乱れが生じた場合は、血液検査で月経に関連したホルモンの数値を調べたり、超音波検査などで子宮や卵巣の状態を確認します。また、基礎体温を毎日計測していただくことが重要です。急激な体重の増減や精神的ストレス、激しい運動負荷などが月経不順の原因になることもあります。 上記の検査で原因の検索を行い、それに応じた治療(ホルモン剤の投与など)をおこないます。
A.いわゆる「不正性器出血」の原因は多岐にわたります。頻度として最も多いのは排卵障害などのホルモンが原因であるケースです。血液凝固に問題があったり、子宮内膜の機能異常がある場合もあります。また、子宮頸管や内膜のポリープや、子宮筋腫や腺筋症が原因のこともあります。場合によっては子宮頸がんや子宮体がんが原因であることもあります。いずれにしても色々な検査をしないと原因がわからないため、産婦人科を受診してください。
A.性交渉を行った後、72時間以内に緊急避妊薬を服用すれば「LNG法」では約99%、「ヤッペ法」では約97%の確率で避妊できるとされています。したがって、予期しない妊娠が心配な方は性交後72時間以内に産婦人科を受診して緊急避妊薬の処方を受けることをお勧めします。
A.子宮筋腫とは子宮の筋層にできる良性の腫瘍で、月経のある女性の3~4人に1人の割合で発生すると言われています。好発年齢は40代後半です。多くは無症状のため経過観察となりますが、過多月経(月経の量が多い)やそれに伴う貧血、たびたび続く不正出血、ひどい月経痛などの症状がある場合は手術を行うこともあります。(閉経が近い方の場合は薬物療法を行う場合もあります。)いずれにしても、そういった治療が必要な方は精査も含めて総合病院にご紹介しています。
A.検診で発見される子宮頚部のポリープはほとんどが良性のもので、悪性である確率は0.1%程度です。したがってほとんどの場合は経過観察で大丈夫ですが、出血などの症状がある場合は切除して詳しく調べた方がよいでしょう。 子宮体部(内膜)のポリープの場合は検診で見つかることはほぼありませんが、出血などの症状で受診された方に超音波検査を行うと見つかることがあります。子宮内膜ポリープを切除するには子宮鏡という内視鏡の一種を用いる必要があるため、専門の施設に紹介しています。
A.ほとんどの子宮頸がんの原因はヒトパピローマウィルス(HPV)というウィルス感染によるもので、主に性交により感染します。HPVに感染しても多くの場合は自然免疫によって身体から消失しますが、約10%は持続感染となり、そのうちの一部が子宮頸がんの原因となります。いわゆる「子宮頸がんワクチン」と呼ばれているものは、このHPVの中でも子宮頸がんを起こしやすいタイプの感染を防ぐワクチンですので、若いうち(理想的には性交経験前)に接種しておくことで将来子宮頸がんに罹るのを防ぐことができます(現在日本では小学6年生~高校1年生に相当する年齢の女子に予防接種することが勧められています)。 性交経験後はHPVに自然感染している可能性がだんだん増えるのでワクチンの効果は劣っていきますが、26歳ぐらいまではかなり高い予防効果が見込まれています。それ以上の年齢では、45歳ぐらいまではある程度の効果はありますが、むしろ子宮頸がん検診を定期的に受けることが重要だと思います。
A.子宮頸がんは、定期的な検診を受けることで予防できる癌です。20歳以上になったら、2年に1回は検診を受けた方が良いでしょう。子宮頸がんの原因のほとんどはヒトパピローマウイルス(HPV)というウィルスで、現実には性交経験のある女性の多くが生涯に一度は感染すると言われています。HPVに感染しても多くの場合は自然免疫によって身体から消失しますが、約10%は持続感染となり、そのうちの一部が子宮頸がんの原因となります。ただしその場合でもHPVに感染してすぐに癌になるわけではなく、「異形成」という前がん病変を経て癌化することがほとんどです。定期的に子宮頸がん検診を受けることによってこの「異形成」の状態の細胞を早めに見つけることができるので、定期的に検診を受けた方がよいです。
A.若い時から定期的に子宮頸がん検診を受けていた場合は、65歳までに1回も異常がなければそのあとに子宮頸がんが発生することは稀です。ですので、そのような方は65歳~70歳ぐらいで検診を受けるのをおやめいただいてもまず心配はないと思います。
A.子宮体がんは、子宮頸がんと違って不特定多数の方に行う検診としての意義は確立されていません。(したがって、わが国でもがん検診としてはおこなわれていません。)子宮体がんは閉経後の方に発症することが多く、また初期に不正性器出血などの症状を伴うことが多いため、閉経前後の年齢以降の方で不正出血を認めた場合は超音波検査と子宮内膜細胞検査でスクリーニングをおこなうことは有用です。全く無症状な場合は、定期的な検査は必要ありません。
A.卵巣がんは過半数が進行がんとして発見される病気で、早期発見のためのスクリーニング方法は確立されていません。超音波検査でスクリーニングを行っている施設もありますが、多くの卵巣がんは超音波検査での早期発見は困難です。人間ドックなどで「CA125」という腫瘍マーカーでスクリーニングを行っている施設もありますが、「CA125」は月経時や子宮筋腫、子宮内膜症、骨盤内の炎症など多様な病態で上昇するため偽陽性が多く、またCA125が上昇しない卵巣がんもあるためスクリーニングは有用でないとされています。結論として、卵巣がんの定期検診というものはまだ確立されておらず、今後の研究課題という状況です。(ただし、子宮内膜症と診断されて卵巣嚢腫がある方は将来的に癌化のリスクがあるため超音波検査による経過観察は有用です。) ※上記のような理由により、当院では卵巣がんの検診はおこなっておりません。
A.更年期障害(更年期症候群)とは、閉経して卵巣からのエストロゲンというホルモンの分泌が減少することによっておきる様々な症状のことで、代表的な症状はのぼせ・ほてり、発汗、動悸、めまいなどですが、その他にも不眠やイライラ、頭痛などの精神神経症状、肩こりや腰痛、頻尿や陰部の乾燥・かゆみなどの症状が出ることもあります。代表的な治療法は原因となるホルモンであるエストロゲンを投与するホルモン補充療法(HRT)ですが、漢方薬による治療、精神療法などを行う場合もあります。 ※当院では、更年期障害の症状が強い方は専門の医師に紹介しています。