2025.05.07
【百日咳とは】
百日咳は百日咳菌によって発生する、名前のとおり激しい咳をともなう病気です。主に気道の分泌物によってうつり、咳のために乳幼児では呼吸ができなくなるために全身が青紫色になってしまうこと(チアノーゼ)やけいれんを起こすことがあります。
百日咳にかかった場合、一般に0.2%(月齢6か月以内の場合は0.6%)のお子さんが亡くなってしまうといわれています。また、肺炎になってしまうお子さんが5%程度(月齢6か月以内の場合は約12%)いるとされており、その他けいれんや脳炎を引き起こしてしまう場合もあります。
【感染経路とおもな症状】
鼻咽頭や気道からの分泌物による飛沫感染や、感染者と接触したりすることによる感染(接触感染)とされています。
経過は3期に分けられ、全経過で約2~3カ月で回復するとされています。
①最初はかぜ症状で始まり、次第に咳の回数が増えて程度も激しくなります(カタル期)。
②次第に特徴ある発作性けいれん性の咳となります(痙咳期)。乳児期早期では特徴的な咳がなく、単に息を止めているような無呼吸発作からチアノーゼ、けいれん、呼吸停止と進展することがあります。
③激しい発作は次第に減衰し、2~3週間で認められなくなります(回復期)。
【予防と対策】
百日咳の予防には、5種混合ワクチン(DPT-IPV-Hib)等の接種が有効です。百日咳ワクチンを含む接種は、わが国を含めて世界各国で実施されており、その普及とともに各国で百日咳の発生数は激減しています。しかし、ワクチン接種を行っていない人や接種後年数が経過し、免疫が減衰した人での発病はわが国でも見られており、世界各国でいまだ多くの流行が発生しています。
我が国では2024年以降に百日咳の感染者数が再び増加傾向を示しており、特に乳児における重症例が増加しています。
【百日咳含有ワクチンによる母子免疫の導入について】
日本では、百日咳に対して乳児への百日咳含有ワクチンの定期接種が生後2か月以降に実施されていますが、ワクチン接種前の乳児への感染例が多く、またその重症化が問題となっています。
オーストラリアや欧米諸国では、妊娠後期の妊婦に百日咳含有ワクチン(Tdap)を接種することで母体から乳児への移行抗体を増加させ、乳児の重症化を防ぐいわゆる「母子免疫ワクチン」が推奨されていますが、、日本ではTdapは認可・販売されていません。 そのため、代替策として3種混合ワクチンDTaP(トリビック🄬)を妊婦さんに接種することが可能です。(最近の研究により、妊婦へのDTaP皮下接種の安全性と乳児への百日咳に対する抗体移行が確認されています。ただし、現時点では妊婦へのDTaP皮下接種による乳児百日咳の重症化予防効果は証明されていないことをご留意ください。 )
【実際のワクチン接種方法について】
・接種時期:アメリカのガイドラインでは妊娠27~36週、イギリスのガイドラインでは妊娠16~32週、オーストラリアのガイドラインでは妊娠20週以降(理想は28週前後)にTdapワクチンを接種することが推奨されています。
・接種回数:1回(0.5ml)
・おもな副作用:接種部位の発赤・腫脹・紅斑・硬結、発熱など
【当院での対応について】
現在の流行状況を鑑みて妊婦さんにも百日咳ワクチンを接種する事が勧められますが、現時点では当院では該当するワクチンを納入しておらず、通院中の方にワクチン接種することができません。
そのため、妊娠28週頃にお近くの内科や耳鼻咽喉科などで3種混合ワクチンDTaP(トリビック🄬)を接種してもらうことをお勧めします(自費)。