2025.03.31
A.当院では妊娠20週~22週ごろに超音波検査にて胎児と付属物の形態スクリーニングを行っております。観察するのは(1)頭頚部・脳、(2)心臓・肺、(3)消化管、(4)腎臓・膀胱・生殖器(5)脊椎・四肢、(6)胎盤・臍帯・羊水の6カテゴリーです。
主な標準観察項目は以下の通りです。
(1)頭頚部・脳…脳室拡大・水頭症の有無、小脳、大槽拡大の有無など
(2)心臓・肺…心軸・心横径、四腔断面・三血管断面、左室・右室流出路など(レベルⅠスクリーニング)
(3)消化管…胃泡の位置、消化管拡張の有無など
(4)腎臓・膀胱・生殖器…腎盂拡張の有無、生殖器の判別など
(5)脊椎・四肢…脊椎突出病変の有無、四肢短縮の有無など
(6)胎盤・臍帯・羊水…胎盤の位置、臍帯血管の本数、付着部位、羊水量異常の有無など
それぞれにおいて異常所見が示唆された場合は胎児診断の専門施設にご紹介します。なお、心臓に関しては多くの種類の先天性心疾患があり診断が最も難しいため、当院での診断が難しい場合は心臓・循環器の専門施設に紹介して診断をしていただいておりますが、胎児期の診断が困難なものも多く、産まれてから異常が疑われて専門施設に紹介となることもあります。
また、合指症や多指症などの四肢の指の疾患も正確な診断が難しく、産まれてからの診断でも問題無い事から当院では指の本数まではスクリーニングをおこないません。ダウン症などの染色体異常は超音波検査のみでは診断が難しいため、ご希望の方には出生前診断をおこなっている施設をご紹介しています。
⚫︎当院で胎児スクリーニングされたおもな疾患
(1)頭頚部・脳…小頭症、脳瘤、脊髄髄膜瘤(キアリ奇形)、脳室内脈絡叢嚢胞、頭蓋形成不全、無頭蓋症、嚢胞性ヒグローマ、口唇口蓋裂
(2)心臓・肺…ファロー四徴症、両大血管右室起始症・心室中隔欠損症、単心室・大動脈縮窄症、左心低形成症候群、胸水症、胎児不整脈、先天性門脈体循環シャント
(3)消化管…腸管拡張症(回腸閉塞)、十二指腸拡張症、腹水症
(4)腎臓・膀胱・生殖器…水腎症、多嚢胞性異形成腎、卵巣嚢腫、陰嚢水腫、総排泄腔
(5)脊椎・四肢…仙尾部奇形腫、四肢短縮症
(6)胎盤・臍帯・羊水…前置胎盤、前置血管、単一臍帯動脈、臍帯嚢胞、臍帯卵膜付着・遊走血管、羊水過多症、羊水過少症(ポッター症候群)
(7)その他・・・腹壁破裂、胎児水腫、胎児共存奇胎